消費税申告全体の流れ
消費税申告書作成の参考に。
新税率10%の取引のみの場合を前提とする。(旧税率を含む場合も基本的考え方は共通。)
消費税申告書を作成するにあたり
最終目標は
1表を完成させること。
その1表を作るには
2表、付表1-3、付表2-3の数字を引用することになるので
2表、付表1-3、付表2-3を作っていく。
2表は
8%や10%の計算のために集計するもので
付表1-3、付表2-3の数字を持ってきただけなので
計算のメインは付表1-3、付表2-3だ。
付表1-3は
課税標準額がメイン。
控除対象仕入税額もあるけど
これは付表2-3で計算したものを合計しているだけ。
付表2-3は
付表1-3へ引き継がれる控除対象仕入税額と
課税売上割合がメイン。
課税標準額について
「課税標準額」
消費税申告書1表の①欄をみると
「課税標準額」とある。
消費税申告書2表の①欄にも
「課税標準額」とある。
もちろん、消費税申告書付表1-3にも
「課税標準額」とある。
この「課税標準額」について
結論を最初に述べる。
「課税標準額」(税抜き)=課税取引(不課税取引、非課税取引、免税取引を除く)
したがって
たとえば
売上の一部に免税取引が含まれていたらそれは除くし
雑収入として課税取引に該当する賃貸料があれば加える
ということ。
このものすごくシンプルなルールを導くために
やたらと長い説明をしたいと思う。
以下は、こんな人におすすめ。
・消費税申告書を読んだり作るとき課税標準額のところで一瞬つまづく人。
・たまにど忘れして課税標準額って税込みだっけ、と思うことがある人。
・課税標準って課税売上のことだとざっくり考えている人。この人は以下の記事もおすすめ。
「課税標準額」と「課税標準」の違い
「課税標準額」と「課税標準」の違いについて
ざっくりと結論をいうと
免税取引を含むか否か。
「課税標準額」=課税取引(税抜き)
「課税標準」 =課税取引(税抜き)+免税取引
以下、これを説明する。
「課税標準額」について
よく使う条文は3つ。
消費税法第45条第1項第1号
消費税法第28条第1項
消費税法第2条第1項第8号第9号
中でも
消費税法第45条第1項第1号は
何回読んでもいいくらい重要。
「課税標準額」の定義
さっそく本題。
「課税標準額」の定義は
消費税法第45条第1項第1号にある。
(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告)
第四十五条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、課税期間ごとに、当該課税期間の末日の翌日から二月以内に、次に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない。ただし、国内における課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)及び特定課税仕入れがなく、かつ、第四号に掲げる消費税額がない課税期間については、この限りでない。
一 その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)に係る課税標準である金額の合計額及びその課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る課税標準である金額の合計額並びにそれらの合計額(次号において「課税標準額」という。)
注)太字引用者
太字に注目してもらうと
「課税標準額」は
「課税資産の譲渡等」から免税取引を除いた部分にかかる「課税標準」をいう。
ここで一番重要なことは
「課税標準額」からは免税取引が除かれるということだ。
では、ここでいう「課税標準」とは何か。
「課税標準」の定義
(課税標準)
第二十八条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び第三項において同じ。)とする。ただし、法人が資産を第四条第五項第二号に規定する役員に譲渡した場合において、その対価の額が当該譲渡の時における当該資産の価額に比し著しく低いときは、その価額に相当する金額をその対価の額とみなす。
注)太字引用者
太字に注目してもらうと
「課税標準」は
消費税及び地方消費税を含まない。
繰り返すが
ここで一番重要なことは
「課税標準」は税抜きだということだ。
そして
この「課税標準」には
免税を除くと書かれていない。
そのため
「課税標準」には免税も含まれていることがわかる。
このように
「課税標準」は税抜きであるから
「課税標準」を引用している「課税標準額」も税抜きとなる。
↓の説明は以上だ。
「課税標準額」=課税取引(税抜き)
「課税標準」 =課税取引(税抜き)+免税取引
もちろん
課税標準なので
1,000円未満の端数は切り捨てる。
消費税申告書付表1-3においても
課税標準額のところは
000
がデフォルトで表示されている。
国税通則法第118条。
(国税の課税標準の端数計算等)
通則法第百十八条 国税(印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の課税標準(その税率の適用上課税標準から控除する金額があるときは、これを控除した金額。以下この条において同じ。)を計算する場合において、その額に千円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
注)太字引用者
「課税資産の譲渡等」、「資産の譲渡等」について
あくまで申告書ベースで理解する場合
「課税標準額」がスタートになる。
そのため、先ほどはあえてスルーした
「課税資産の譲渡等」についてまとめる。
消費税法第45条第1項第1号
消費税法第28条第1項
いずれにおいても
「課税資産の譲渡等」がでてきた。
そもそも
消費税における取引の種類には
不課税取引、非課税取引、免税取引、課税取引
この4種類がある。
最初に結論を述べると
「課税資産の譲渡等」=免税取引、課税取引(不課税取引、非課税取引を除く)
「資産の譲渡等」=非課税取引、免税取引、課税取引(不課税取引を除く)
理由は以下。
「課税資産の譲渡等」の定義
「課税資産の譲渡等」については
消費税法第2条第1項第9号に規定がある。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
九 課税資産の譲渡等 資産の譲渡等のうち、第六条第一項(非課税)の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。
注)太字引用者
そのため
「課税資産の譲渡等」からは
非課税取引が除かれる。
課税資産というくらいだから
非課税は除くということ。
「資産の譲渡等」の定義
さらに
「課税資産の譲渡等」の中ででてきた
「資産の譲渡等」について
消費税法第2条第1項第8号をみると
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
注)太字引用者
「資産の譲渡等」は
事業であって
対価を得るもの
としている。
つまり
「資産の譲渡等」からは
事業でなかったり(引っ越しのために洗濯機をメルカリで売った等)
対価を得ない(贈与等)
不課税取引が除かれる。
したがって
「資産の譲渡等」=非課税取引、免税取引、課税取引(不課税取引を除く)
「課税資産の譲渡等」=免税取引、課税取引(不課税取引、非課税取引を除く)
となる。
「課税標準」についてのおまけ
消費税法第28条第1項は
課税資産の譲渡等に関する課税標準を対象とする。
そして、これは税抜きとなることを説明した。
他方で
消費税法第28条第2項は
特定課税仕入れに関する課税標準を対象としている。
カタカナでいうと
リバースチャージについての規定だ。
(課税標準)
第二十八条
2 特定課税仕入れに係る消費税の課税標準は、特定課税仕入れに係る支払対価の額(対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額をいう。)とする。
このように
消費税及び地方消費税を含まないと規定されていないことから
リバースチャージの課税標準は税抜きにしない。
リバースチャージは
国外事業者がでてくるので
消費税がかかっていないことから税抜きにしない。
このリバースチャージについては
書くことが多すぎるので
今回はここまでにとどめる。
法人税申告書の別表4表、5表についてはこちら。
plasticbagg.hatenablog.jp
法人税申告書の別表11についてはこちら。
plasticbagg.hatenablog.jp
*課税売上割合のところをまとめたら、収入に関する論点をまとめる。
*ほかの年分の過去問でほかの論点もまとめる。
*ほかの過去問もだす。それの計算過程を書いたルーズリーフも。
*課税標準の定義みたいなのでやたら講義で聞いたやつも。
*免税事業者とかもまとめるとなると消費税だけでえらいボリュームになりそう。