消費税申告全体の流れ
消費税申告書作成の参考に。
新税率10%の取引のみの場合を前提とする。(旧税率を含む場合も基本的考え方は共通。)
消費税申告書を作成するにあたり
最終目標は
1表を完成させること。
その1表を作るには
2表、付表1-3、付表2-3の数字を引用することになるので
2表、付表1-3、付表2-3を作っていく。
2表は
8%や10%の計算のために集計するもので
付表1-3、付表2-3の数字を持ってきただけなので
計算のメインは付表1-3、付表2-3だ。
付表1-3は
課税標準額がメイン。
控除対象仕入税額もあるけど
これは付表2-3で計算したものを合計しているだけ。
付表2-3は
付表1-3へ引き継がれる控除対象仕入税額と
課税売上割合がメイン。
消費税申告書付表2-3 課税売上高と課税売上割合
今回は
付表2-3の
課税売上高と
課税売上割合
についてまとめる。
この課税売上高と課税売上割合は
控除対象仕入税額を計算するときに使う。
plasticbagg.hatenablog.jp
課税仕入れの全額を控除対象仕入税額(全額控除方式)にするには
課税売上高が5億円以下
または
課税売上割合が95/100以上
でなければならないからだ(消法30条2項本文)。
(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条
2 前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が五億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が百分の九十五に満たないときは、同項の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額、特定課税仕入れに係る消費税額及び同項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額(以下この章において「課税仕入れ等の税額」という。)の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。
一 当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算する方法(個別対応方式)
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法(一括比例配分方式)
注)太字引用者
そして課税売上割合について
最初に結論を述べると
課税売上割合 = 課税売上高 / (課税売上高 + 非課税売上高)
このように
課税売上割合を計算するためには
課税売上高を使うので
まずは課税売上高についてまとめる。
課税売上高について
課税売上高
まずは結論。
課税売上高(税抜) = 課税資産の譲渡等の対価の額の合計(税抜) - 売上げに係る税抜対価の返還等の合計(税抜)
課税売上高の定義は
消費税法第30条第6項に規定されている。
(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条
6 ・・・第二項に規定する課税期間における課税売上高とは、当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項(課税標準)に規定する対価の額をいう。以下この項及び第九項第一号において同じ。)の合計額から当該課税期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額(当該課税期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額から同項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額を控除した金額をいう。)の合計額を控除した残額(当該課税期間が一年に満たない場合には、当該残額を当該課税期間の月数(当該月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。)で除し、これに十二を乗じて計算した金額)をいい、・・・
注)太字引用者
では、課税売上高を構成する各要素についてまとめる。
課税資産の譲渡等の対価の額の合計
まずは結論。
課税資産の譲渡等の対価の額の合計(税抜) = 課税売上(税抜) + 免税売上
先ほどの消費税法第30条第6項の中ででてきた
課税資産の譲渡等の対価の額の合計には
消費税法第28条1項の課税標準を用いる。
(課税標準)
第二十八条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び第三項において同じ。)とする。・・・
注)太字引用者
条文からも明らかなとおり
税抜きである。
そして
課税資産の譲渡等の対価の額は
非課税取引と不課税取引を除くが
免税取引は除かないので
免税取引と課税取引が対象になる。
そのため
課税売上高を計算するときには
課税取引の売上については消費税率10%であれば1.1で割り
免税取引の売上についてはそのまま加えることになる。
売上げに係る税抜対価の返還等の合計
売上げに係る税抜対価の返還等の合計については
一言でいうと
売上値引(税込)を売上値引(税抜)にして
売上(税抜)から売上値引(税抜)を除く
これだけ。
以下は詳細な説明。
売上げに係る税抜対価の返還等の合計については
先ほども引用した消費税法第30条6項に規定されている。
(仕入れに係る消費税額の控除)
第三十条
6 ・・・第二項に規定する課税期間における課税売上高とは、当該事業者が当該課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項及び第九項第一号において同じ。)の合計額から当該課税期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額(当該課税期間中に行つた第三十八条第一項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額から同項に規定する売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額に七十八分の百を乗じて算出した金額を控除した金額をいう。)の合計額を控除した残額(当該課税期間が一年に満たない場合には、当該残額を当該課税期間の月数(当該月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。)で除し、これに十二を乗じて計算した金額)をいい・・・
注)太字引用者
売上に係る対価の返還等の合計については
消費税法第38条1項に規定されている。
(売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除)
第三十八条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行つた課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。)と当該対価の額に百分の十を乗じて算出した金額との合計額(以下この項及び第三十九条において「税込価額」という。)の全部若しくは一部の返還又は当該課税資産の譲渡等の税込価額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額(以下この項から第四項までにおいて「売上げに係る対価の返還等」という。)をした場合には、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間において行つた売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(当該返還をした税込価額又は当該減額をした債権の額に百十分の七・八を乗じて算出した金額をいう。次項において同じ。)の合計額を控除する。
注)太字引用者
消費税法第38条1項は
控除対象仕入税額とは別枠で
消費税額から控除するもの。
そのため
ここでのメインは
消費税法第30条6項。
この2つの条文の内容をまとめると
先ほど書いたとおり
売上値引(税込)を売上値引(税抜)して
売上(税抜)から売上値引(税抜)を除く
ということになる。
もうすこし条文に沿って説明すると
ややこしいがこうなる。
消費税法第38条1項では
売上値引き等をしたらそれの消費税額を算出する。
すなわち
7.8/110をするので
国税分である消費税額7.8%を算出する。
そして
消費税法第30条6項では
売上値引き等をした金額から
上記で算出した消費税額7.8%に100/78した金額を引いたものを控除する。
つまり、ここでしている計算は
売上値引(税込)を売上値引(税抜)にしているだけ。
税抜きにするだけだから
1.1で割れば済む話だが
国税である消費税額7.8%をなんとか活用しようとして
7.8/110×100/78
このようなことをしている。
免税取引を売上値引きした場合は?
仮に
免税取引を売上値引きした場合
そもそも税抜きだからこの面倒な計算は不要。
単に、売上から免税取引の売上値引き分を引けばいいだけ。
非課税売上高について
ここまでは課税売上高についてまとめた。
冒頭でも述べたとおり
課税売上割合 = 課税売上高 / (課税売上高 + 非課税売上高)
課税売上割合を計算するには
非課税売上高を求める必要がある。
非課税売上高については
単に課否判定の問題にすぎない。
非課税取引の典型例としては
受取利息や
土地の賃貸収入(1か月を超えるもの)
などだ。
非課税売上高の注意点(有価証券売却益)
1点だけ注意すべきは
非課税売上である有価証券売却益については
課税売上割合を計算する際に
有価証券売却額×5/100
しなければならない(消令48条5項)。
(課税売上割合の計算方法)
消令第四十八条
5 事業者が法別表第一第二号に規定する有価証券(第九条第二項に規定するゴルフ場利用株式等を除く。)並びに同条第一項第一号及び第三号に掲げる権利(以下この項において「有価証券等」という。)の譲渡をした場合(当該譲渡が第二項第三号に掲げる現先取引債券等の譲渡又は第三項に規定する現先取引債券等の売戻しに該当する場合を除く。)又は同条第一項第四号に掲げる金銭債権(資産の譲渡等を行つた者が当該資産の譲渡等の対価として取得したものを除く。以下この項において同じ。)の譲渡をした場合には、当該譲渡に係る第一項第一号に規定する資産の譲渡等の対価の額は、当該有価証券等又は金銭債権の譲渡の対価の額の百分の五に相当する金額とする。
注)太字引用者
これをしないと
有価証券を売却したら非課税売上高が大きくなりすぎて
他の期と比較するとその期だけ課税売上割合が著しく下がるため
期ごとの安定性を欠くからだろうか。
課税売上割合について
課税売上割合 = 課税売上高 / (課税売上高 + 非課税売上高)
ここまでで
課税売上高と非課税売上高が算出できた。
課税売上割合を算出するには
これらを使えばいい。
課税売上割合を計算するときの注意点
1点だけ気を付けるべきことがある。
課税売上割合を計算するときの分子は
課税売上高である。
当然、課税売上高なので
売上値引き等をした金額は除くが
これを除かずに課税売上割合を計算してしまいがちだ。
課税売上高と非課税売上高を計算したところで
油断してあり得ないミスをしがちなので注意。
法人税申告書の別表4表、5表についてはこちら。
plasticbagg.hatenablog.jp
法人税申告書の別表11についてはこちら。
plasticbagg.hatenablog.jp
*課税売上割合のところをまとめたら、収入に関する論点をまとめる。
*ほかの年分の過去問でほかの論点もまとめる。
*ほかの過去問もだす。それの計算過程を書いたルーズリーフも。
*課税標準の定義みたいなのでやたら講義で聞いたやつも。
*免税事業者とかもまとめるとなると消費税だけでえらいボリュームになりそう。