消費税の経理処理について
税抜き経理をしている場合
ややこしいことがでてくる。
課税売上高が5億円を超える
または
課税売上割合が95%未満
この場合課税仕入れするときは
全額控除方式を採用できないため
一括比例配分方式か個別対応方式にしなければいけない。
そのため
全額控除方式とは異なり
課税仕入れに計上できない金額がでてくる。
それを控除対象外消費税額等という。
この金額は消費税にほぼダイレクトで影響するもので
控除できないことにより増加した消費税額分については
雑損失に計上することになる。
例えば
これを仕訳にすると以下の通りだ。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
売掛金 |
11,000 |
売上 |
10,000 |
借受消費税 |
1,000 |
||
仕入 |
8,000 |
買掛金 |
8,800 |
仮払消費税 |
800 |
||
借受消費税 |
1,000 |
仮払消費税 |
800 |
控除対象外消費税額等 |
300 |
未払消費税 |
500 |
雑損失 |
300 |
控除対象外消費税額等 |
300 |
繰延消費税
税抜経理において
控除対象外消費税額等は
課税売上割合を乗じて算出され
それが雑損失として損金となる。
そのため
費用に関して控除対象外消費税額等が生じた場合は
損金となるので問題ない。
ところが
資産に関して控除対象外消費税額等が生じた場合は
損金ではなく償却しなければならない。
とはいえ
資産取得段階では課税売上割合が不明であるため(期末にならないとわからない)
一旦、繰延消費税額等として扱い
前払費用的なものとして
5年以上の期間にわたって償却していく。
法人税確定申告書に添付する別表
繰延消費税額等が生じた場合に
これを損金算入するときには
法人税の別表16(10)が必要となる。
(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入に関する明細書の添付)
第百三十九条の五 内国法人は、各事業年度において前条第一項から第三項までに規定する資産に係る控除対象外消費税額等の合計額又は同条第三項若しくは第四項に規定する繰延消費税額等につき損金経理をした金額がある場合には、同条の規定により損金の額に算入される金額の計算に関する明細書を当該事業年度の確定申告書に添付しなければならない。
注)太字引用者
繰延消費税額等として処理する要件
資産に関する控除対象外消費税額等が
すべて繰延消費税額等となるわけではない。
以下の場合のいずれかにあたる場合には
損金経理処理していれば
損金として計上することができる。
① 課税売上割合が80%以上
② 棚卸資産にかかるもの
③ 特定課税仕入れにかかるもの
④ 金額が20万円未満のもの
(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入)
第百三十九条の四 内国法人の当該事業年度(消費税法第三十条第二項(仕入れに係る消費税額の控除)に規定する課税売上割合に準ずる割合として財務省令で定めるところにより計算した割合が百分の八十以上である事業年度に限る。)において資産に係る控除対象外消費税額等が生じた場合において、その生じた資産に係る控除対象外消費税額等の合計額につき、その内国法人が当該事業年度において損金経理をしたときは、当該損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
2 内国法人の当該事業年度(前項に規定する事業年度を除く。)において生じた資産に係る控除対象外消費税額等が次に掲げる場合に該当する場合において、その該当する資産に係る控除対象外消費税額等の合計額につき、その内国法人が当該事業年度において損金経理をしたときは、当該損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
一 棚卸資産に係るものである場合
二 消費税法第五条第一項(納税義務者)に規定する特定課税仕入れに係るものである場合
三 二十万円未満である場合
注)太字引用者
繰延消費税額等の損金算入限度額の計算
繰延消費税額等に該当する場合
償却(損金計上)できる限度額は
以下のように計算する。
繰延消費税額等が生じた事業年度(購入した事業年度)
損金算入限度額 = 繰延消費税額等 × 当該事業年度の月数/60 ×1/2
なお
なぜ1/2するかというと
資産を購入した事業年度においては
その資産を事業年度の真ん中で購入したものとみなして計算するため。
(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入)
第百三十九条の四
3 内国法人の当該事業年度において生じた資産に係る控除対象外消費税額等の合計額(前二項の規定により損金の額に算入される金額を除く。以下この条において「繰延消費税額等」という。)につき当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該繰延消費税額等につき当該事業年度において損金経理をした金額のうち、当該繰延消費税額等を六十で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の二分の一に相当する金額に達するまでの金額とする。
注)太字引用者
繰延消費税額等が生じた事業年度後
損金算入限度額 = 繰延消費税額等 × 当該事業年度の月数/60
(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入)
第百三十九条の四
4 内国法人の当該事業年度前の各事業年度において生じた繰延消費税額等(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この条において「適格組織再編成」という。)により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた繰延消費税額等(以下この項において「承継繰延消費税額等」という。)を含むものとし、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。以下この条において「適格分割等」という。)により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この条において「分割承継法人等」という。)に引き継いだ繰延消費税額等を除く。以下この項において同じ。)につき当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該繰延消費税額等につき当該事業年度において損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該繰延消費税額等を六十で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(承継繰延消費税額等につき当該適格組織再編成の日の属する事業年度において当該金額を計算する場合にあつては、当該承継繰延消費税額等を六十で除しこれにその日から当該事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額)に達するまでの金額とする。
注)太字引用者
繰延消費税額等の仕訳
では具体的に計算して
その際の仕訳についてもまとめる。
課税売上割合が75%とした場合に
当事業年度に建物を7,200万円で購入すると
繰延消費税額等は1,800万円になる。
7,200万円 × 0.25 = 1,800万円
この場合の損金算入限度額は
180万円になる。
1,800万円 × 12/60 ×1/2 = 180万円
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
繰延消費税額等 |
1,800万円 |
控除対象外消費税額等 |
1,800万円 |
繰延消費税額等償却 |
180万円 |
繰延消費税額等 |
180万円 |
交際費等について
税抜経理の場合において
交際費が損金不算入となるか計算する際には
消費税に相当する部分は交際費から除く。
というのも
上記の仕訳のとおり
消費税は基本的にBS科目にしかならず
PLには影響していないからである。
もっとも
上記の仕訳のとおり
控除対象外消費税額等については
雑損失となるためPLに影響する。
そのため
交際費のうち控除対象仕入税額等に該当する部分については
雑損失ではなく交際費に含んで損金不算入の計算をする。
(交際費等に係る消費税等の額)
12 法人が支出した措置法第61の4条第4項(交際費等の損金不算入)に規定する交際費等に係る消費税等の額は、同項に規定する交際費等(以下「交際費等」という。)の額に含まれることに留意する。
ただし、法人が消費税等の経理処理について税抜経理方式を適用している場合には、当該交際費等に係る消費税等の額のうち控除対象消費税額等に相当する金額は交際費等の額に含めないものとする。(平26年課法2-6、平28年課法2-11により改正)(注)
1 税込経理方式を適用している場合には、交際費等に係る消費税等の額は、その全額が交際費等の額に含まれることになる。
2 税抜経理方式を適用している場合における交際費等に係る消費税等の額のうち控除対象外消費税額等に相当する金額は、交際費等の額に含まれることになる。
3 2により交際費等の額に含まれることとなる金額のうち、措置法第61条の4第4項に規定する飲食費に係る金額については、同項の飲食費の額に含まれる。
4 控除対象外消費税額等のうち特定課税仕入れ(その支払対価の額が交際費等の額に該当するものに限る。)に係る金額は、本文の「交際費等に係る消費税等の額」に含まれないことに留意する。
オマケ1 税抜経理と税込経理の理解
結論としては
ほぼ同じ。
ただし
オマケ2で後述するとおり
ほんの少し誤差がでたりするが。
税抜経理の場合
最終的に
所得2,000になる。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
売掛金 |
11,000 |
売上 |
10,000 |
借受消費税 |
1,000 |
||
仕入 |
8,000 |
買掛金 |
8,800 |
仮払消費税 |
800 |
||
借受消費税 |
1,000 |
仮払消費税 |
800 |
未払消費税 |
200 |
||
所得 |
2,000 |
||
(消費税 |
200) |
税込経理の場合も
最終的に
所得2,000になる。
というのも
税込経理では
消費税分が含まれるため
売上仕入が税抜経理の場合よりも大きくなる。
ところが
消費税を租税公課として費用計上するので
最終的には
所得が税抜経理と一致する。
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
売掛金 |
11,000 |
売上 |
11,000 |
仕入 |
8,800 |
買掛金 |
8,800 |
租税公課(消費税) |
200 |
未払消費税 |
200 |
所得 |
2,000 |
オマケ2 税抜経理で生じる雑益雑損失
税抜経理をする上で
この上なくめんどくさいことは
数十円の雑益雑損失がでることだ。
これがでてくる根拠は以下である。
(仮払消費税等及び仮受消費税等の清算)
6 法人が消費税等の経理処理について税抜経理方式を適用している場合において、消費税法第37条第1項*1の規定の適用を受けたこと等により、同法第19条第1項*2に規定する課税期間の終了の時における仮受消費税等の金額(特定課税仕入れの消費税等の経理金額を含む。)から仮払消費税等の金額(特定課税仕入れの消費税等の経理金額を含み、控除対象外消費税額等に相当する金額を除く。)を控除した金額と当該課税期間に係る納付すべき消費税等の額又は還付を受ける消費税等の額とに差額が生じたときは、当該差額については、当該課税期間を含む事業年度において益金の額又は損金の額に算入するものとする。(平9年課法2-1、平27年課法2-8により改正)(注) 特定課税仕入れの消費税等の経理金額とは、5の2*3のただし書により、特定課税仕入れの取引に係る消費税等の額に相当する額として経理した金額をいう。
そして
これが仕訳上どこで生じるかというと
ここである。
借受消費税 |
1,000 |
仮払消費税 |
800 |
---|---|---|---|
雑損失 |
20 |
未払消費税 |
220 |
もしくは
借受消費税 |
1,000 |
仮払消費税 |
800 |
---|---|---|---|
未払消費税 |
170 |
||
雑益 |
30 |
消費税額の計算をしていると
課税標準のところで1,000円未満切り捨てたり
税額のところで100円未満切り捨てる。
それにより
計算された消費税額は
仕訳上の借受消費税と仮払消費税の差額とずれる。
そのため
この差額が雑益雑損失となる。
繰り返しになるが
上記仕訳の未払消費税額が
実際に支払う消費税額のことだ。
これが固定で
それと
借受消費税と仮払消費税の差額
を比べて
雑益雑損失が生じる。